思考と心を整え、世界の見方を変える―― 哲学研究者・教育者の近内悠太さんによる「心を整える哲学の部屋」シリーズ。 その最新講座、第12弾のテーマは「物語」です。著書『世界は贈与でできている』『利他・ケア・傷の倫理学』などで知られる近内さんとともに、 私たちが世界をとらえるのに欠かせない「物語」について考えます。物語と聞くと、小説や映画などの創作を思い浮かべるかもしれません。けれど、物語はフィクションの中だけにあるものではありません。私たちは現実を“物語として”認識しながら生きています。出来事をただ経験するのではなく、「つまり、こういうことなんだ」と意味を与えて理解する。その行為こそが、物語を生きるということです。物語とはある出来事と別の出来事の関係性のことです。たとえば、子どもの頃、当たり前に受け取っていた毎朝のお弁当。大人になって振り返ると、それは親からの愛の物語として立ち上がります。けれど、自分が親になったとき、親/お弁当/自分という3つの関係性が切り替わり、「母親なら毎朝手作りするものだ」という物語に自らを縛り、苦しくなることもあるかもしれません。縛られていた呪いに気づくのも、他者の愛に気づくのも、物語の力です。物語を通して、私たちは自分の人生に出会い直すことができます。日常の中で立ち止まり、心を整えたい方のご参加をお待ちしております。