思考と心を整え、世界の見方を変える―― 哲学研究者・教育者の近内悠太さんによる「心を整える哲学の部屋」シリーズ。第13弾のテーマは「共感」です。 私たちは共感を、「気持ちがわかること」「価値観が一致すること」だと考えがちです。しかし本講座では、その前提から問い直します。 歌うとき。踊るとき。誰かと笑い合うとき。 人間が古くから行ってきたこうした営みには、言葉や価値観よりも先に、呼吸やリズムがあります。身体と身体が響き合い、「一緒にいる」という感覚を生み出す、人間のきわめて根源的な営みです。 身体を同期させることによって、共同作業が可能になる。 身体的同期によって、仲間意識が醸成され、連帯感が生まれ、社会性が確保される。ホモ・サピエンスはそのように進化してきました。 よくよく考えみると、私たちは「共同作業」ばかりしています。遊びも労働も学習も家庭生活も、他者の身体とのコラボレーションによって成り立っています。たとえば、会話というものも、二人以上の人間の身体による共同作業なのです。 私たちはいつからか、そんな身体性を忘れ、コミュニケーションを単なる情報のやりとりだと思い込むようになってしまいました。現代の混乱はここにあります。 身体を通して、共感する。 それは、緊張をやわらげ、敵意を抑え、協力を可能にする力を持っています。言い換えれば、「誰かと仲良くなる作法」でもあります。 敵対せず、共に生きるとはどういうことか。身体に宿る共感を手がかりに、その可能性を探ります。